• 竹の子書房を訪ねてみない? 『竹の子書房とは何か』

    電子書籍発行集団『竹の子書房』への リンクと解説です。

    画像クリックで特集記事へ
  • 電子書籍書庫です 『氷原公魚Archive』

    竹の子書房で刊行された氷原公魚関連書籍のご案内。

    画像クリックで特集記事へ
  • 破竹のナイトメアがよくわかる! 『破竹のナイトメア』

    竹の子書房で連続執筆中。
    社員名簿連動企画『破竹のナイトメア』特集。

    画像クリックで特集記事へ

スポンサーサイト

Category : スポンサー広告
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
Posted by Dr.wakasagi on --.--

魔法少女まじかる☆ぱんぷきん

Category : 小説展示
─ 編集情報 ─

 ▼2011年
 ▼竹の子書房ハロウィン企画用寄稿作品
 ▼キャラクターイメージ 徳倉ざくろ「ハロウィン娘」
 ▼小説 氷原公魚
 ▼この作品は、竹の子書房の電子書籍『トリック・オア・ツイート ハロウィン2011』に掲載されています。


徳倉ざくろ「ハロウィン娘」

魔法少女まじかる☆ぱんぷきん

 ──ククルビタ Cucurbita
 カボチャなどのウリ科植物の、ラテン語。

 ──コロキュンティス Colocyunthis
 カボチャなどのウリ科植物の、ギリシア語。


「今年もいい実が採れるわね!」
 自然保護団体『貧者の一灯』代表の麦原瑞穂は、見事に紅葉したハゼノキを見上げて満足そうに笑った。
 ハゼノキは五月から六月にかけて、黄緑色のかわいい花を咲かせる。そして秋には、小指の先ほどの大きさの扁平な球状の実ができる。
 この果実には高融点の脂肪を含んだ顆粒がぎっしりと詰まっていて、蒸して圧搾すると上質のロウが採れるのだ。
 『貧者の一灯』はそのロウを使って和ロウソクを作り、都会の子供たちを招いて自然保護活動を行い、ハゼノキが自生する山間部の村を無秩序なダム建設から守ろうとしている。
「こんなに豊かな自然。そして、父祖の土地を守ろうとする村の人たちの素朴な願い。それを簡単にダムの底に沈めたりなんて、していいはずがないわ」
 凛とした瑞穂の声は、森を歩きながら実を集める仲間や子供たちの耳に心地よい。
「あとで魚釣りも、するんだよねー」
「たくさん釣れるといいねー」
「たくさん釣った子にはご褒美出すぞー」
「わあいっ♪」
 自然と触れ合う子供たちの顔に、笑顔が溢れた。
 今年のロウソク作りも順調だ。
 瑞穂はみんなに聞こえるように、大きな声で言った。
「みんなで和ロウソクを作って、ダム建設反対と自然の保護を訴えましょう。秋祭りではたくさんのロウソクを点して、ダムなんて要らないって言うの。みんなの力を集めれば、きっとダムなんて建設中止に……」
 彼女の声は途切れた。
 閃光が走る。
 連続する爆発音が、瑞穂の言葉をかき消す。
 子供たちの悲鳴が聞こえた。
「うわあぁぁぁんっ! あ、熱い、熱いよおっ!!」
「おかあさーん、おかあさーぁぁぁん!!」
「な、なんなのっ? これはいったいなんなのおっ!!」
 ここは平和な日本なのに、ナパームで爆撃された直後のような地獄絵図に瑞穂たちは取り囲まれていた。
 火ダルマになった子供が一人、炎の海に沈む。
 かわいそうだが、火傷は全身に及んでいる。手当てをしても、もう助からないかもしれない。
 瑞穂は唇を噛んだ。
 こんなとき、泣き叫ばない自分が不思議だった。
 だが、泣き叫んでも誰も助けられないという義務感が、今にも崩れ落ちそうになっている瑞穂を支えている。
 これ以上の被害が出る前に、生き残った子供たちだけでも私が守らなきゃ!
「みんな、逃げ……」
 火の粉から子供たちを庇いつつ、振り返った瑞穂。
 しかし、彼女はまたしても絶句した。
 地獄を創り出していたのは──少女だった。
 三角に尖った魔女の帽子。
 腰まで届く蒼白い髪は、かわいらしく真っ赤なリボンで束ねられている。
 背中から広がる蝙蝠の羽根。
 カボチャを意識したドレススカートはふんわりと丸く膨らんで、カボチャパンツを覆っている。
 突き出した太股と尻尾が、呪文を唱えながら踊る少女の動きに合わせて動く。
「ククルククルクル、ククルビタ! コロンココロン、コロキュンティス!! かぼちゃ魔法で、手のつけようもない山火事になあれーっ!!」
 巨大なカボチャランタンをぶら下げた杖を掲げ、一見微笑ましく思える悪魔的動作で軽やかなステップを踏み、少女は満面の笑みを浮かべた
 呪文に呼応して、降り注ぐ牛ほどの大きさのカボチャ。
 それがハゼノキを幹ごと粉砕し、周囲一帯に大量の実を散乱させる。
 すでに説明したとおり、ハゼノキの実は油脂の塊だ。
 その実がカボチャで押し潰されて油が滲んだところに、少女の持つランタンが吐き出した青い鬼火が引火して、森は凄まじい猛火に包まれている。
「にゃあごーっ!!」
 少女の足元で使い魔らしい悪魔の猫が、鼠を捕まえたときのような誇らしい啼き声をあげた。
「熱いよう! おかあさーん!!」
「代表! 子供たちが死んじゃいます!!」
「川に向かって逃げるのよ!!」
 泣き叫ぶ子供たちを炎から守るようにして、大人たちは斜面を下って川に逃げようとした。
 その方向に、少女はランタンを振りかざす。
「ククルククルクル、ククルビタ! コロンココロン、コロキュンティス!! かぼちゃ魔法で、無残な死体の山になあれーっ!!」
 次々と降り注ぐカボチャの雨。
 カボチャは容赦なく瑞穂たちの行く手を阻み、逃げる子供たちの脳天を直撃した。
 飛び散る星屑。そして頭から血を流し、次々と仲間や子供が倒れる。
 追い打ちをかけるように巨大カボチャが子供たちの背や手足を容赦なく潰し、血の海に浮かんだマッシュポテトみたいな死体が量産されていく。
「いひぃぃぃぃいっ!!」
 瑞穂は悲鳴をあげた。
 しかしそれでも彼女は恐怖に震える足腰に鞭打って、両手を広げて少女の前に立ちはだかった。
 少しでも時間を稼ごうと思ったのだ。
「あ、あんた……な、なんでこんなことするのよお!!」
「私のこと?」
 少女は意味がわからないという風に、首を傾げる。
「あんた以外に誰がいるっていうのよ!!」
「あんた呼ばわりは酷いなあ。ぷんすか。まあ、教えてあげるけど──私、魔法少女まじかる☆ぱんぷきん! 魔法の国から私の幸せのため、人間界に修行に来たの~♪」
「……は!?」
 間の抜けた問答だった。
 ここで起きている全ての残虐行為に対して、あまりにも場の雰囲気をわきまえていない。
 そんな回答と対峙した瑞穂は、不覚にも本日三度めの失語症に陥りそうになった。
「魔法少女って、あの……サリーとかマミとか…」
「そうそう。アッコとかモモとか」
「馬鹿にすんじゃないわ! あんたみたいな魔法少女が何処にいるってのよ!! 魔法少女ってのはねぇ、もっと正義の味方なのよっ!!」
 緊張の糸が切れた一瞬を利用して、瑞穂は少女との間を詰めていた。大きく背を逸らし、その勢いを利用して振りあげた拳で少女を殴る。
 鈍い音と共に、華奢な身体が地面に崩れ落ちた。
 少女はそのまま、ピクリとも動かない。
「……え、あっ……」
 確かに殴り倒すつもりだったが、なんだか相手に避けられそうな気がしていた瑞穂は、普通にブン殴れたことにむしろ戸惑ってしまった。
 だが、それは更なる恐怖の始まりに過ぎない。
 瑞穂の足元で、低い笑い声が響く。
「……ふふふふふふふふ」
 思わず飛びのいた瑞穂の目前で、ゆらりと三角帽子が持ち上がってくる。
「……馬鹿だなぁお姉さん。魔法少女ってさあ、早い話が魔女の若くてピチピチしてる頃だよね……魔女がさあ、正義の味方なんてするわけないじゃん。あんなのアニメだけの話だよぉ~♪」
 帽子の下に、少女の微笑みがちらりと垣間見えた。
 ──怖い。外見と中身のギャップが怖い。
「私たち、超正統派の悪魔崇拝者だもん♪ だからさ、誰が何人死んでも全然気にしないし~目的のためだったら、平気で生贄にしたりするしぃ♪」
 どんなにかわいらしく言おうが、言っていること自体が充分怖い。
 瑞穂は小便を漏らしつつ、腰を抜かした。
「ひいいいいいいいいいいいっ!!」
「じゃあそろそろお姉さんは、たっぷりとこの秋収穫の新カボチャ味わってねっ? ククルククルクル、ククルビタ! コロンココロン、コロキュ……」
 瑞穂は炎上する森を、這って逃げる。
 その背中ごしに、魔法の呪文を唱えながらお供のカボチャ猫を従えて、少女の靴がパキパキと小枝を踏み折る音が聞こえてくる。瑞穂は泣きながら叫んだ。
「た、たぁすけてぇぇぇぇ!!」
「にゃあご!!」
「頭をかわいいカボチャと取り替えてあげるねぇ♪」
「いやああああっ!! こ、こっちこないでぇーっ!!」
 もうダメだ。
 ここで死ぬんだと、瑞穂が観念しかかったその時……バスが来た。
 炎に包まれた林道を、タイヤから炎を噴き出しながら一台の観光バスが突っ込んでくるではないか。
 瑞穂たちがチャーターしたバスだ。
「乗れ!!」
 バスの運転手が乗降ドアを開いて叫んだ。
 瑞穂が渾身の力を振り絞り、デッキにしがみついたのを確認すると、運転手は全速でバスを後退させた。
「逃げるぞ、ここはヤバい」
「子供たちが!!」
「このバスに乗ってない子はみんなダメだった!!」
 瑞穂は車内に目を向け、愕然とした。
 この村にきたとき、このバスは子供たちが定員一杯に乗車していた。
 今はそれが……九人だけだ。
「うぬぬーっ、逃がすもんかぁ~」
 かわいくつぶやいた、まじかる☆ぱんぶきんの攻撃は執拗に続く。
 巨大なカボチャが衝突するたび、バスの天井が凹んで窓ガラスが砕けた。
 タイヤはとっくにパンクしていて、バスは大きく揺れながら村道へ出た。
 村役場も家も、全ての建物が炎に包まれている。
 運転手が震えながら村を抜ける道に向かってハンドルを切り、瑞穂に言った。
「このまま村を出ます!!」
「お願い!!」
 瑞穂に異論があろうはずがなかった。
 スピードを出せないバスはガタゴトと峠を登り、死の恐怖から開放された安堵からか、乗客たちの顔には虚ろな微笑みが浮かぶ。
 でも、彼らは逃げ切れてはいなかった。
「ククルククルクル、ククルビタ! コロンココロン、コロキュンティス!! かぼちゃ魔法で、バスごと谷底に転げ落ちて新聞の一面になあれーっ!!」
 魔法少女まじかる☆ぱんぷきんのかぼちゃ魔法で、道からゴロゴロとカボチャが生えてきて、タイヤが破裂したバスのハンドルは容易にとられた。
 ガードレールを突き破るバス。
 そしてバスごと死に向かって転落していく瑞穂は、確かに見た。
 そこにはカボチャ猫を従えた少女が、建設会社の制服を着た男から貰った現金を、「いちまーい、にまーい」と、数えている姿があった。
 それにしてもなんという、罪を感じさせないかわいらしさだろう。
 その姿は、まるで貰った折り紙の枚数でも数えているようにしか見えなかった。
 瑞穂は悟った。

 きっとあの子は、幸せになるんだろう。
 だってホントの魔法少女、もとい魔女だもん……。

 ──数年後。
 村はダムに沈んだ。
 湖水は濁り、魚は一匹残らず死に絶えた。
 村に続く山道では過去に悲惨なバス転落事故があり、それ以来誰もそこを通らない。
 住んでいるのは僅かな人々だけ。
 あたりは一面のカボチャ畑で、その僅かな人々が手入れをしている。
 生活は苦しく、彼らは爪の先に明かりを点すような生活なのだという。
 でも、彼らの口にはミニカボチャが押し込まれているので、余計なことを話す心配は決してない。
 だから、誰も知らないのだ。
 この土地が、魔女に支配されているということを。
 今夜もカボチャの城の上を、写真に写らない鳥たちがテケリ・リ! と啼いて飛ぶ。


(了)
スポンサーサイト
Posted by Dr.wakasagi on 17.2011

プロフィール

Dr.wakasagi

Author:Dr.wakasagi
氷原公魚と申します。
引退した物書きですが、電子書籍作家として絶賛復活中。
電子書籍製作集団『竹の子書房』
第一製作部ラノベ課に所属しております。

最新トラックバック

来場者数総計

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR



全品無料の電子書籍、好評配信中!

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。